【Sinn徹底解剖】ドイツ発ツールウォッチの歴史と革新的テクノロジー

【Sinn徹底解剖】ドイツ発ツールウォッチの歴史と革新的テクノロジー

1. Sinn ジンとは?

ジン(Sinn)は、ドイツ・フランクフルトで誕生した時計ブランド。1961年に元パイロットのヘルムート・ジンによって設立され、当初は航空時計や軍用時計の開発を中心に展開していました。

「ジン特殊時計会社」の名のもと「極限環境でも信頼できる時計」をコンセプトに、視認性・耐久性・耐磁性といった実用的な性能に優れたモデルを多数展開。

特にダイバーズウォッチや特殊部隊向けのミッションウォッチ(EZMシリーズ)など、過酷な環境に耐える技術力が魅力で、「タフな時計が欲しい」「本当に使える時計が欲しい」という方にとって理想のブランドと言えます。

2. ジンの歴史について

2-1. 1961年:パイロットが創業した時計ブランド


Helmut Sinn Spezialuhrenをフランクフルトにて創業

ジンは1961年、元ルフトハンザ航空のパイロットであり飛行教官でもあったヘルムート・ジンによって、ドイツ・フランクフルトに設立されました。当初は航空時計や計器、軍事・訓練用クロノグラフに特化し、機能性・信頼性を重視した製品づくりが特徴でした。創業者自身がパイロットだったことから、実際の使用環境を熟知したうえで開発された時計は、プロフェッショナルから高い評価を受けるようになります。

2-2. 1970年代:ドイツ軍・特殊部隊に正式採用


軍用コックピット・クロック

1970年代、ジンの時計はその優れた性能により、ドイツ空軍や警察特殊部隊(SEK)などに正式採用されます。特にクロノグラフ「Sinn 156」は、視認性・耐衝撃性・精度の面で高い評価を受け、ジンの名を軍用時計ブランドとして確固たるものにしました。この時期から「ミッションウォッチ」というジン特有のコンセプトが形成され始めます。

2-3. 1994年:技術者ローター・シュミットによる改革


ローター・シュミット氏

1994年、スイスの名門ウォッチブランドの製造部門マネージャーとして開発等に携わったローター・シュミット氏がジン社を引き継ぎます。シュミット氏は、機械式時計の耐久性と実用性をさらに高めるため、数々の革新的技術を導入。特に耐傷性を高める「テギメント加工」、ムーブメントの結露を防ぐ「Arドライテクノロジー」、過酷な環境でも使用可能な「HYDRO技術」などがこの時期に開発されました。

2-4. 1997年〜:ミッションウォッチの確立


ミッションタイマーEZM1

1997年には、ドイツ特殊部隊や消防、ダイバー、パイロットなどに向けたプロ仕様の「EZM(Einsatzzeitmesser)」シリーズが登場。視認性、防水性、耐磁性など、極限環境での使用に耐えうる設計が特徴です。EZM1は、税関特殊戦闘部隊、EZM2はGSG9ダイバー部隊によって使用されました。以降も「Uシリーズ」などを展開し、タフで信頼性の高い“リアルツールウォッチ”ブランドとしての地位を不動のものとします。

2-5. 現在:知る人ぞ知る“機能美”ブランド


156.1がドイツ・デザイン賞で「エクセレント・プロダクト・デザイン賞2025」を受賞

現在もジンは、フランクフルトの工房にて高品質な時計を製造し続けています。ドイツの厳格な工業規格を満たす品質管理のもと、見た目以上に“使える時計”を提供し続けています。その実用性とデザイン性の高さから数々の時計アワードを受賞しています。派手さはないものの、時計好きの間では“通好みの本格派ブランド”として高い支持を獲得しデザイン性と機能性が見事に融合したジンの時計は、まさにプロフェッショナルのための計器と言えるでしょう。

3. 代表的なシリーズ紹介


Sinn 556

ミニマルで高性能なデイリーユースモデル

シンプルなデザインと高い耐久性を兼ね備えた「556」シリーズは、日常使いからビジネスまで幅広く活躍。サファイアクリスタルや100m防水といった基本性能も高水準。


Sinn U1

ドイツ潜水艦鋼を使ったダイバーズ

高耐圧・高耐食性を誇る「ドイツ潜水艦の鋼材」を使用したプロダイバーズ。1000m防水、視認性抜群の文字盤、テギメント加工による耐傷性など、機能美に優れたモデルです。


Sinn EZMシリーズ

プロフェッショナル専用「ミッションウォッチ」

EZM(Einsatzzeitmesser)は、特殊部隊や救助隊のニーズを満たすために開発されたシリーズ。過酷な環境下での使用を想定し、防水性・耐磁性・低温耐性などが強化されています。

4. ユニークな技術開発「ジン・テクノロジー」

ジンが目指すのは、証券取引所、極地探検、水面下や雲の上、砂漠や熱帯雨林など、身に着ける場所がどこであろうと絶対に信頼できる腕時計を開発すること。そんなジンだからこそ叶えられた技術がこちらです。

テギメント加工(Tegiment Technology)

ケースの表面の硬化を実現する処理です。特殊な工程を経て素材の表面を硬化させています。セラミックと同等の耐傷性を備え、日常使用による擦り傷や衝撃を大幅に軽減します。この加工は目に見える装飾よりも“耐久性”に重きを置くジンならではの技術です。

Arドライテクノロジー(Ar-Dehumidifying Technology)

時計内部の湿気を除去し、結露やオイルの劣化を防ぐためにドライカプセルの搭載、EDRパッキンの使用、プロテクトガスの充墳という3つの技術的要素を取り入れています。ムーブメントはほぼ無水の環境となりこの問題を解決。

  • ドライカプセル: ケース内の湿気を吸収する乾燥剤入りカプセル。交換可能。ケースに埋め込まれたドライカプセルは薄い水色ですが水分量が増すと濃くなり視覚的に乾燥度合いが分かるようになっています。
  • EDRパッキン: 通常のゴムよりも極めて透湿性の低い特殊パッキン。
  • プロテクトガス充填: 潤滑オイルの劣化が引き起こす放電腐食を防ぐため、時計のケース内に希ガスと呼ばれる極めて安定したプロテクトガスを充墳することにより、静電気や不安定ガスを含む空気を可能な限り排除し放電腐食を防ぎます。
このテクノロジーにより、ムーブメントの寿命を延ばし、視認性も常にクリアに保ちます。

ハイドロ技術

ケース内部を特殊なオイルで完全に満たすことで、光の屈折や水中での視認性の低下を防ぎます。

  • 水中でもどの角度からもクリアに文字盤が見える
  • 水圧によるケース変形の心配がない
  • 曇りや気泡の発生を抑える
などの利点が得られ、特にダイバーズウォッチにおいて大きな力を発揮します。代表モデルは「UX」シリーズ。

マグネチックフィールド・プロテクション(耐磁性)

ジンの一部モデルでは、最大80,000A/m(アンペア毎メートル)の磁場に耐える構造を備えています。これはISO基準の約16倍で、磁場の強い環境でもムーブメントの精度を保つことができます。耐磁構造には、軟鉄インナーケースや耐磁ムーブメントの採用が含まれます。

ジン特殊オイル66-228

機械式時計のムーブメントのパーツが円滑な運動を行えるよう使用されている潤滑オイルは、通常-25℃で粘性が高くなり時計の精度が維持できなくなりますが、ジンが使用する特殊オイルは-66℃まで粘性を維持し+228℃まで蒸発が起きません。 このオイルの使用により急激な温度変化に耐え、-45℃から+80℃の温度範囲でDIN(ドイツ工業規格)の定めた刻時精度の維持を可能にしました。 このオイルが使用されているモデルは、ドイツ出荷の際に全品-45℃と+80℃での検品が行われています。極地探検、山岳救助、寒冷地ミッションなどで性能を発揮します。

ディアパル(DIAPAL Technology)

ディアパルシステムでは、時計の精度を保つために最も重要な脱進機に特別な素材を組み合わせることで、潤滑オイルを使用しなくても部品同士が摩擦を起こさずに作動。長期間にわたりムーブメントの、とりわけ脱進機の精度を保つことができます。これは長期間ノンメンテナンスを可能にする、画期的な技術です。

5.ジンについての動画

【ジン】ジンのパイロットウォッチを語る 156.1/103.St.Ty.Hd 【THREEC CHANNEL 第270回】

【ジン】 903とナビタイマーの違い、歴史【THREEC CHANNEL 第248回】

【ジン】 THREEC BP内にできたSinn DEPOT Niigataに潜入 【THREEC CHANNEL 第198回】

一覧へ戻る